イノベーションが健在なことを示す確実な兆候として、特許申請件数は世界各地で増加している。しかし、知的財産保護センター(Center for the Protection of Intellectual Property: CPIP) の新しいレポートによると、一部の国の特許庁は需要の速度に追い付いていないという。
「The Long Wait for Innovation: The Global Patent Pendency Problem(イノベーションへの長い待ち時間:世界的な特許宙ぶらりん問題)」において、著者であるMark Schultz、Kevin Madiganの両氏は、韓国などの国ではレビューの品質を保ちつつ時宜に適い申請を処理していると述べている。しかし、ブラジルやタイでは、幅広い分野で発明者は平均して最高10年またはそれ以上の間、申請処理を待たなければならない場合がある。
特許申請が遅延すると、消費者は最新の製品に迅速にアクセスできなくなることが多い。インドの保健専門家は最近、様々なイノベーションのための特許の遅延は、医学分野における改良を鈍化させる可能性があると指摘した。
特許審査の長い未処理状況を減らし、革新性溢れる産業の競争力を改善したいと考える国には、実用的で実証済みのソリューションがある。Schultz、Madiganの両氏は、作業の共有化と冗長なステップの排除により特許庁が審査を迅速化できる特許審査ハイウェイ・プログラムを提案している。
作業の共有化とその他のプロセスの改善により、日本は特許付与までの平均期間を、2008年の6.4年から2015年には3.3年に短縮することに成功している。日本は「特許審査分野において世界最速かつ最高の品質」を誇る方向に着実に進んでおり、また同国の経験は焦点を絞り効率をあげることによって、何を達成できるかを実証している。
多くの国では、長い待機時間の一部の原因は審査官不足であり、雇用や研修の増加が役に立つと考えられる。例えば、インドは最近、審査官の数を倍化する取り組みを開始し、タイは下級審査官がより複雑な申請案件に対処できるよう研修している。
CPIPレポートの目的は、審査官がその業務をより良好かつ迅速に行えるよう支援することである。特許遅延に関する世界レベルでの真剣な会話、出願中特許に関するデータのより優れた追跡、そして問題を解決するソリューションへの専心と実施を呼び掛けている。
SchultzおよびMadiganの両氏が述べるように、「特許が重要だからこそ、遅延も重要な問題なのです。」 特許が与える保護によりイノベーションが実現し、そのイノベーションが世界的進展を牽引し、世界に利益を与える。特許付与に対する効率的ながらも徹底的なプロセスがなければ、すべてが失われる。